We 命尽きるまで - 映画評
命つなぐもの 映画「We命尽きるまで」を見て
久保田千秋
司馬遷の「史記」でさえも、歴史的事象と、そこに登場する個人的契機を分けて記述することによってしか、膨大な歴史を捉えることができなかった。すなわち皇帝や諸侯の業績に歴史的事象を集約させた「本紀」・「成家」と、歴史を生成している諸個人の内面を解析した章である「列伝」とに分離せざるをえなかったのである。しかし、「映像史家」とも呼ぶべき藤山顕一郎監督は掌中に納まるような小型カメラを武器に、歴史の一断面と、そこに復活した群像と個人の精神性と精神史とを、見事に統一して描き切ったのである。
映画を見る前「We」というタイトルの一部分から、記念撮影的な内向きの映像といった先入観を持ってしまった。見終わって、そのような予見を抱いた自分の矮小さを殴打されたような衝撃をうけた。監督に対する非礼と自分の愚昧さを深く恥じた。
この映画はホンモノなのだ。不屈の闘志を抱き続けてきた人々の、戦闘再開の物語が着実に記録されている。そして、個人がどのようの背景を背負って運動に登場してきているかを、遭遇した時代状況を追って過去に遡り、あるいは家人をカメラに収めて、余すところなく描き出している。インタビューの言説や、アジ演説や会議の場面にもこの運動がいかに生成し、個人がいかなる意識で参加してきたのかが物語られている。さらに驚くべきことに、デモを見ている沿道の人々や、ビラを受け取る人の反応や、官憲の表情にまで描写は及んでいる。こうして2007年、6月15日のドラマは時空を超えて広がり、集会の場面で再び収斂する。映画は運動に携わる多彩な人間の「層と思想」を主にテロップによる人物紹介と、インタビューにより表現してきたが、この集会の場面では「6・15行動」のテーマそのものが浮き彫りにされる。各々の発言によって、集会を取り巻く現段階の政治状況や、集会の今日的意義が描出される。ここは、たとえ百年後の人々がこの映画を見ても、集会の意義と参加者の意志を理解できるほどの説得性をもって、丁寧に収録されている。そして、塩川喜信氏の集会宣言こそは、この運動のまさに戦闘宣言であり、原点であり、総括であり、「全て」が集約され表現されているのである。とにかく、多角多元的な表現によって、一人の人間がものを認識する際の視座の制約をこの映画は超えている。
しかし、観る者が最も魂を揺す振られるのは、病身で壇上に立った黒羽純久氏の気迫に満ちた姿と発言であろう。映画のタイトルにもなっている氏の決意と強靭な精神性は、私たちを鼓舞し、魅了する。試写会の後のトークショウでの塩見孝也氏の「自らが命を輝かしていかなくては」という言葉にもつながっていく。
「9条改憲阻止の会」はこの映画(財産)を持つことで、運動を対象化して質的な深みを増し、広がりを持つことであろう。映画の中で三上治氏は「道ひとつ隔てたところにある国会と私たちとの乖離」を語っている。この乖離の外側に広がるのは、ビラを配る側と受け取る側の乖離である。運動の浸透と映画「We」は、この溝を埋めるものと確信する。観賞後、私自身は、6・15の隊列に参加できたことを誇らしく思った。
献花して南通用門の「夏」
we(9条改憲阻止行動のドキュメント)
三上 治
このフイルムというか映像を人がなんと呼ぶかはわからない。僕は9条改憲阻止行動のドキュメントということにする。なんとよんでいいかわからないから勝手にいっているだけである。この点についてはお許しを請いたい。
この映像は昨年の10月21日反戦行動を出発にしている。そこから、今年の6月15日の行動までを対象にしている。これは、日付にそった記録とした構成されているが、その背後には1960年代の行動がはめ込まれている。透かし絵のように浮かび上がってくる。この行動を構成した多くの人たちが行動しながら想起していたであろう事柄を巧みに表現しているといえる。
僕はこの手のドキュメントはそれほど共感したという記憶はない。1960年代から70年代にかけてのたたかいをドキュメントにした映像を数多く見てはいるがどちらかといえば違和感が強かった。最後に見たのは『にっぽん零年』という作品であったように思う。この作品については、重信メイさんや宮台真司さんと感想会を持ったのであるが、そのときも違和感は強かった。理由は作者と映像の主体者との間の関係がうまくないという思いが喚起されたためであるように思う。
僕はこの映像を見せてもらってこの種の不満は出てこなかった。10月21日から3月の国会前座り込みハンストをはさんで6月15日にいたる行動を映像化したにしてもそれは行動に関係ない人々にも見るに耐えうるものになっているか、それが懸念していたことであった。その懸念は見た後にはきれいに消えていた。
TOP|
作品紹介
|
監督プロフィール
|
DVD申込み
|
お問い合わせ
〒160-0004 東京都新宿区四谷4−23 第1富士川ビル3F
株式会社イメージユニオン気付「9条改憲阻止の会」We制作委員会